プロローグ
(甘さ:★★★・・)
「ぐぁっ!?」 呻き声とともに、ゴンッ…という鈍い音がロッカールームに響く。 背後からのタックルで、ドアに頭をぶつけ脳震盪を起こしたのは、 海稜高校野球部、エースで四番を打っている甲斐栄次だった。 『お前が悪いんだからな…甲斐……』 同級生でキャッチャーをやっている俺、巻田健吾は、 その場に倒れた甲斐の身体をガムテープで拘束しながら、 今しがた、甲斐が俺にした屈辱的行為に対する怒りで打ち震えていた。 ――――三十分前。 「おい巻田、テメェ、ボール見失うってどういうこった!」 他校との練習試合後のロッカールームに、甲斐の怒声が響き渡る。 チームメイトは、“また始まった…”と呆れた顔をし、 俺の方へ憐みの視線を送りつつも、 着替え終わると、そそくさとその場を離れていく。 『…それは……甲斐が、構えた所と全然違う所に投げたからで…』 「あぁっ?」 ベンチに座る俺に、厳つい顔を近づけ、上から睨み付けてくる。 そのあまりの迫力に、反論しようとする気持ちが萎んでいく。 気がつくとロッカールームには、 未だ着替えを済ませていない甲斐と俺だけが残っていて、 庇ってくれる味方は誰もいない状況になっていた。 『………悪かった…。 この負けの原因は、俺のパスボールで流れが変わったせいだ』 「そうだ。分かりゃいいんだ、分かりゃ!」 甲斐は試合に負けると、決まって俺のせいにした。 チームプレイが大事な野球で、あまり褒められた行為ではないのだが、 それが許されるのは、 甲斐がズバ抜けて上手く、その攻守に渡る活躍のおかげで、 弱小チームであるうちの部でも試合に勝つことができるからだった。 「さてと、今日は何させっかな……」 甲斐は悪魔みたいな笑顔を浮かべながら、 俺の前を行ったり来たりして、今日のストレス解消法を考えている。 パシらされるだけで済むこともあれば、 ケツバットで号泣するほど悶絶させられることもあり、 何をさせられるか分からない不安な時間だけが過ぎていく。 「あっ!そういや、この前監督室に忍び込んだ時、 見つけたもんがあったんだった」 そう言うと、甲斐は自分のエナメルバッグをごそごそと掻き回し、 茶色いガラス製の容器を取り出した。 ラベルに力瘤のマークと、男の自信という文字が見えたので、 中身の見当はすぐについた。 『ッ…まさか……精力剤…か?』 「やっぱこれ、そうだよな! 監督五十手前の癖に薬ねぇとチンポ勃たねぇのかよって思ってたら、 急に本人戻ってきて、慌ててバッグに隠して持ってきちまったんだ」 甲斐はそう言って笑いながら、 容器を振って一粒取り出し、俺に手渡してきた。 「普段からガッチガチになる健全な青少年が飲んだらどうなるか、 巻田の身体で試してみようと思ってよ」 『っ!?い、いや、それはさすがにマズいだろ。 盗ったのが監督にバレたら、ただじゃ済まないぞ』 監督のことを出しつつも、俺自身が一番飲みたくない理由を抱えていた。 男好きがバレてしまうからだ…… もし裸に剥かれて、じっと見られながら薬を飲まされることになったら、 こんな汗臭いロッカールームの中だと、飲む前から勃起してしまう。 「監督は言えねぇだろ、“オレの精力剤知らねぇか?”なんて。 まあ、お前が飲みたくねぇってんなら、別のことするけどよ」 甲斐は首を動かしゴキッ、ゴキッと音を鳴らしながら、 まるでボクサーがその手にグローブを嵌めるかのように、 黒いバッティンググローブでその拳を覆った。 「今日のオレは、相当ストレス溜まってるってこと忘れんなよ」 『っ……』 恐ろしく力の強い甲斐に、サンドバッグにされるというのは、 想像以上の恐怖で、もはや俺に選択の余地は残されていなかった。 『わ、分かった。飲むから、殴るのは勘弁してくれ』 「へへっ、巻田は物分かりがいいから好きだぜ」 そう言って屈託なく笑う甲斐に、 何故だか好感を持ってしまう自分が情けなかった。 頭を振って、そんな心を振り払いつつ、裸に剥かれる前に、 手に持った錠剤を口に含み、スポーツドリンクで流し込んだ。 『…っ……ゴクゥゥッ!』 「なっ!?おい、早ぇよ! まだ下脱いでねぇだろうがよ!」 甲斐は俺をベンチから立たせると、ベルトの留め金を外し、 俺の背後に回り込んで、後ろから抱きつくように腕を伸ばし、 ユニフォームの中の、スラパンの下に手を滑り込ませてきた。 『お、おいっ!? 何をやってるんだ、甲斐っ!』 「チンポがどのくらい硬くなるのかが知りてぇから、 こうしてずっと握っとくんだ。 ひょっとしたら金属バットみてぇに硬くなるかもしんねぇからな」 他人のモノを触る抵抗感より、興味の方が完全に上回っているようで、 甲斐は俺のバットを、バッティンググローブを着けた手で握り締めた。 『あうっ!?』 「お、スゲェ勢いで硬くなってきてんじゃねぇか。 精力剤ってのは、すぐ効くもんなんだな」 “お前に抱きつかれて握られてるからだ!”と叫びたい気持ちだったが、 男好きと悟られず、上手く勘違いしてくれたのは幸いだった。 「おおっ、どんどんデカくなってるぞ! 巻田、テメェ、どんだけデカちんなんだよ」 甲斐の手の中でどんどん膨張していく肉棒で、 前袋にファールカップが入っているスラパンが前へと押し出され、 ユニフォームの股間部分を大きく突っ張らせていく。 『っ!?……ハァッ……ハァッ……』 「うおおっ!チンポがバッティンググローブ越しでも分かるくらい、 すげぇ熱くなってきたぞ!」 いつも通りに完全勃起をした頃になって、 ようやく精力剤自体の薬効が表れ始める。 強制的に勃起させる薬は、勃起した状態の俺をさらに追い立てる。 『くっ、あっ……ううっ……』 「マジかよ!?まだデカくなるのか!?」 指が回りきらなくなるほどの太さに膨張しようとする肉棒を、 甲斐の手がギュッと押さえつけ、その硬さを味わうように押し潰される。 『ぐ、ああっ!…チンポがっ…痛いっ……あああっ!!』 「すっげ、マジでガッチガチに硬くなってやがる!」 感触を確かめるため何度も握り直されると、 肉棒の先端にある亀頭が、ファールカップという壁に押し当てられ、 スラパンの前袋の薄い布にグリグリ擦れて充血していく。 『んぐっああっ!!ンッ、アアッ!!』 「快感もハンパねぇみてぇだな! 普段通り扱いたら、もう泣いちまうくらい効くんじゃねぇか?」 甲斐はそう言うと、俺の肉棒を扱き始めた。 滑り止め効果のあるバッティンググローブで擦り上げられた肉棒は、 甲斐の言った通り泣きたくなるような鋭すぎる快楽を俺に与える。 『ひっああぁっ!! それ、ダメ、だっ!ううっ、あああああっ!!!』 「マジで泣き入ってんじゃねぇか! 気持ち良過ぎて、イっちまいそうか?オラッ、どうなんだ!」 『アアッ!!あぁぁっ!!イ、イきそうっ!!イきそうだぁぁっ!』 竿を甲斐に責めたてられ、 先っぽの亀頭が絶えずファールカップと擦れる。 感じたことのない快感に、俺の限界はすぐに訪れた。 『ンッ、あああっ!!イ、イクッ!!イクゥゥゥッ!!!』 「っ!?早ぇよ、おいっ、ちょっ、待てっ…ああっ!?」 甲斐が手を抜くより早く、俺の金属バットが火を噴き、 ドプッ、ドプッと白いマグマをスラパンの中に溢れさせた。 いつもより量も勢いもあり、逃げ遅れたバッティンググローブは、 あっという間に俺のザーメンで白くドロドロに汚れていった。 『っ…ハァッ……ハァッ……』 「…ウゲェ……巻田、テメェ、何してくれてんだよ!」 スラパンから引き抜かれた甲斐の手は、 黒いバッティンググローブに大量の白濁液がへばりついた状態で、 動かす度に白い粘液がダラダラと垂れ落ちていた。 「チッ……とんだ早漏野郎だな!」 明らかにイラついている甲斐は、 ザーメンで汚れた手を上に持ってきて、俺の口元を鷲掴むように覆った。 『むぐぅっ!?』 むせ返るような、すえた男の臭いが鼻腔を貫き、 唇にまだ温かい粘液が纏わりつく。 「……ちゃんと掃除してくれるよな、巻田?」 『っ!?…………ンッ…』 甲斐が言う“掃除”の意味を理解した俺は、 恐る恐る舌を伸ばし、自分が出したザーメンを舐め取った。 『んぐぅぅっ!?ん、ぐぇっ……』 「おいおい、ゲロったりすんじゃねぇぞ。 もし吐いたら、床掃除までさせるからな!」 『んんっ……んぐぇっ……』 ザーメンの味に時折オエッとなりながら、 俺は甲斐のバッティンググローブを掃除し続けた。 「お、そういやまだ精力剤の効果切れてねぇんだよな……うっし」 甲斐は汚れた手とは逆の手で、 今度はユニフォームの上から股間を握った。 より正確に言うならは、ファールカップを上から掴んだ状態だった。 「へへっ……直に擦らなくても、こうすりゃ効くよな!」 そう言って、ファールカップを小刻みに振動させる。 その動きは、射精直後の敏感な亀頭との間に強い摩擦を生み出した。 『ン゛ッ!?ンンンッ!!!』 「暴れんなよ……掃除がまだ終わってねぇだろ!」 口を塞がれたままで、亀頭責めをされる。 俺はくぐもった苦悶の声を上げながら、ガクッ、ガクッと体を震わせた。 「ずいぶんとキツそうにしてやがるな…… 早漏野郎の巻田なら、またすぐにイっちまうんじゃねぇか?」 甲斐はそう言うと、俺を絶頂へと追い立てるように激しく手を動かした。 熱を帯びるほど亀頭が擦れ合い、強すぎる快感に貫かれる。 「ン゛ン゛――――――ッ!!!!」 身体を仰け反らせ、甲斐に体重を預ける体勢になる。 甲斐はそんな俺の耳元でこう呟いた…… 「……イっちまえよ」 『ン゛ッ!?……んっあああああああぁっ!!!』 甲斐の言葉が引き金となり、俺は絶頂に達する。 だが、身体はビクッ、ビクッと痙攣したものの、 肉棒から溢れてきたのは、透明な液体だった。 ……射精直後に責められた俺は、耐えきれずに潮噴きをしてしまった。 「ウエッ!? な、なにションベン漏らしてんだよ!」 男の潮噴きなど知っているはずがない甲斐は、 ユニフォームの外にまで滲み出してきた液体を小便だと思い、 慌ててバッティンググローブを手から外した。 「早漏の上にお漏らし野郎とか、マジありえねぇぞ!」 甲斐はそう罵ると、 未だザーメンで汚れたままのバッティンググローブも外して、 ハァハァと肩で息をする俺の口に、二つまとめてねじ込んだ。 『むっぐぉぉっ!!!?』 ザーメンと潮が、俺の口内に溢れかえり、舌に纏わりついてくる。 すぐ吐き出そうとする俺に、甲斐が待ったを掛けた。 「俺が手ぇ洗ってくる間、そのまま反省してろ! ゼッテェ吐き出すんじゃねぇぞ!」 そう叫ぶと、ドアの方へ向かって歩きだした。 その後ろ姿、背番号1を見た俺の目から涙が溢れ出した。 何でこんなヤツがうちのエースなんだ…… 何でこんなヤツの言いなりにならなきゃいけない…… 何でこんなヤツを……好きだなんて思っていたんだろう…… そんな考えが頭の中でぐるぐると渦巻き、 それはやがて、怒りという明確な感情として現れた。 『…っ……甲斐!俺はお前を、許さないぞっ!』 バッティンググローブを吐き出し、そう叫びながら、 甲斐の無防備な背中にタックルをし、ドアにぶつけて気絶させた。 『お前が悪いんだからな…甲斐……』 何度もそう呟く俺の、怒りに任せた壮絶な復讐劇が、 今、始まろうとしていた………… (本編へ)